
開咬(オープンバイト)は、上下の前歯が噛み合わず、食事や発音に支障をきたす噛み合わせの異常です。
インターネット上では、割りばしや輪ゴムを使った『自力で開咬を治す方法』が紹介されることもありますが、これらの方法は非常に危険です。
自己流の方法ではかえって歯や歯茎に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
この記事では開咬を自分で治すリスクや正しい治療方法について詳しく解説していきます。
開咬を放置するデメリットや治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてください。
開咬を自分で治すのは危険

開咬(オープンバイト)を自力で治すのは危険です。
歯並びや噛み合わせの異常は、一般の方が自力で改善できるものではありません。
一時的に圧力を加えることで歯が動いたように感じるかもしれませんが、力を適切に加え続けなければすぐに元に戻ってしまいます。
さらに自己流で強い力をかけたり、無理な方向に歯を押したりすると、歯や歯茎に大きな負担がかかります。
その結果、歯の寿命を縮めてしまったり、歯茎を傷めて感染症を引き起こしたりするリスクも高まるのです。
特にインターネットなどで見かける割りばしや輪ゴムを使った矯正方法は、医学的根拠に乏しく、逆に歯並びを悪化させたり歯を失ったりする原因になる危険性もあります。
また矯正治療は見た目だけでなく、骨格や歯根の位置、噛み合わせ全体のバランスを考慮して進められます。
これらはレントゲンや専門的な診断なしには判断できないため、自己判断で行うのは非常にリスクが高いと言えるでしょう。
最悪の場合、歯列がさらに乱れてしまい、治療がより困難かつ高額になることもあります。
開咬を含め、歯並びのトラブルを解消したい場合は、必ず専門の歯科医院で相談することが大切です。
開咬(オープンバイト)とは

開咬(オープンバイト)とは、上下の奥歯を噛み締めたときに、前歯同士が接触せず隙間が空いてしまう状態を指します。
前歯部分で食べ物を噛み切ることができなかったり、口が閉じにくかったりすることで自覚することが多いです。
日常生活では「麺類が噛み切れない」「サ行・ラ行が発音しづらい」「常に口が開いてしまう」といった支障をきたすケースもあります。
ここでは開咬の種類や軽度〜重度の症状について見てみましょう。
開咬の種類
開咬には『歯性開咬』と『骨格性開咬』の2種類があります。
それぞれの特徴と原因は以下の通りです。
| 種類 | 特徴 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 歯性開咬 | 歯の向きや位置の異常によって上下の歯が噛み合わないもの | 指しゃぶり、舌癖、口呼吸など |
| 骨格性開咬 | 顎の骨格自体に問題があり、上下の歯が噛みあわないもの | 遺伝、親知らずの影響など |
歯性開咬は、習慣的な癖によって歯並びがずれてしまうことで発症します。
幼少期からの指しゃぶりや慢性的な口呼吸などが主な原因です。
一方、骨格性開咬は骨格自体に問題があり、歯だけでなく顎そのものの形が影響しています。
親からの遺伝要素も強く、外科手術が必要となるケースも少なくありません。
軽度~重度の開咬の症状
開咬は前歯の開き具合や奥歯の噛み合わせ状態、顎の骨格的な問題の有無、舌の機能や位置、呼吸パターンなど、さまざまな要素を総合的に評価して診断されます。
軽度〜重度の開咬の症状は以下の通りです。
| 重症度 | 軽度 | 中度 | 重度 |
|---|---|---|---|
| 前歯の隙間 | 1~2mm程度 | 2~4mm程度 | 4mm以上 |
| 奥歯の噛み合わせ | ほぼ正常 | やや不良の場合あり | 不良 |
| 日常生活への影響 | 発音や咀嚼にわずかな影響がある | 食事や発音に影響がある | 食事困難や発音障害 |
軽度の開咬は普段の生活では気づきにくい場合もありますが、食べ物を前歯でうまく噛み切れなかったり、発音が少し不明瞭になったりすることがあります。
舌癖の対策や筋機能トレーニングによる改善が可能な場合も多いです。
中度になると見た目にも隙間がわかりやすくなり、前歯で噛めない、口が閉じにくいなどの症状が目立ちます。
重度の場合は明らかな前歯の隙間に加えて、顔つきにも変化が現れることが多く、専門的な矯正治療や手術が必要になることもあります。
開咬の原因

開咬の主な原因として、以下が挙げられます。
- 舌癖
- 指しゃぶり
- 口呼吸
- 骨格的な問題
- 顎関節症
- 舌小帯短縮症・巨舌症
ここでは上記6つの原因についてそれぞれ解説します。
舌癖
舌癖とは、舌を本来あるべき位置からずらして動かす無意識の習慣を指します。
通常、リラックスしているときの舌は上顎に軽く触れているのが理想の状態ですが、舌癖がある人は舌で前歯を押したり、歯の隙間に舌を挟んだりすることが習慣化しています。
こうした力が長期間にわたって加わると、前歯が徐々に外側に押し出され、上下の前歯の間に隙間ができてしまうのです。
また食べ物を飲み込むときに舌を突き出す『異常嚥下癖』も舌癖の一種で、歯列に悪影響を与えます。
舌癖は開咬だけでなく、出っ歯やすきっ歯などの問題も引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
指しゃぶり
指しゃぶりは幼少期に多く見られる自然な行動ですが、長期的に続くと歯並びや骨格に悪影響を及ぼします。
特に4歳を過ぎても指しゃぶりの習慣が残っている場合、前歯に常に圧力がかかることで、上の歯が外側に、下の歯が内側に傾き、上下の歯の間に隙間が生じやすくなります。
その結果、開咬を引き起こしてしまうのです。
指だけでなく、おしゃぶりやタオル、爪などを頻繁に口に入れる癖も同様のリスクを伴います。
さらに頬杖をつく癖や寝る姿勢によっても片側に力がかかり、歯列に影響が出ることがあります。
こうした習慣は無意識に行われることが多いため、なるべく早い段階で気づき、必要に応じて専門家に相談して悪化を防ぐことが大切です。
口呼吸
口呼吸は口を使って呼吸する習慣のことで、これが長く続くと開咬を引き起こす大きな原因になります。
口呼吸が習慣化すると舌の位置が低くなり、前歯を内側から押し出す『低位舌』の状態になります。
これにより、上下の前歯に隙間が生まれ、開咬の症状が現れるようになるのです。
また、口周りの筋肉が使われにくくなるため、筋肉のバランスの崩れも歯列に影響します。
特に鼻炎やアレルギー性鼻炎などで鼻が詰まりやすい人は、無意識に口呼吸になりがちです。
矯正治療だけでなく、原因となる呼吸器疾患の治療も並行して行う必要があります。
骨格的な問題
上顎や下顎の発育に偏りがあると、上下の歯が自然に噛み合わなくなり、前歯に隙間ができてしまいます。
これは遺伝的な要素が強く、家族に開咬の人がいる場合は特に注意が必要です。
また成長とともに徐々に症状が現れるため、永久歯が生え揃う頃になって気づくケースも多く見られます。
骨格性の問題は歯だけの矯正では改善しきれないこともあり、重度の場合は外科手術(外科的矯正)を併用することもあります。
顎関節症
顎関節症は、顎の関節部分に痛みや違和感が生じる疾患で、重度の場合には開咬の原因となることもあります。
関節の構造が炎症などで破壊されると顎の関節頭が吸収され、下顎が後方回転し、前歯の噛み合わせが崩れるというメカニズムです。
このような状態で歯列矯正を行っても、顎関節の変形が進行すれば再び開咬になってしまう恐れがあるため、まずは顎関節の治療が優先されます。
マウスピースによるスプリント療法や理学療法など、関節への負担を減らす治療が効果的です。
顎関節症による開咬は、歯並びだけでなく関節構造の安定性も考慮する必要があるため、専門的な診断と複合的な治療が大切になります。
舌小帯短縮症・巨舌症
舌小帯短縮症とは、舌の裏側にある『舌小帯』というヒダが生まれつき短く、舌の動きが制限される状態です。
この異常により、舌が本来の位置である上顎に収まりにくく、常に低い位置にある『低位舌』の状態になります。
すると舌が内側から前歯を押す力が加わり、結果として開咬を引き起こすことがあります。
一方、巨舌症は舌そのものが大きく、歯列に過剰な圧力をかけてしまう病気です。
舌が常に歯を押す状態が続くことで、前歯が前方に開いてしまいます。
どちらの症状も口腔機能全体に影響を及ぼすため、外科的手術(舌小帯切除術や舌縮小術)を検討するケースもあります。
開咬を放置するデメリット

開咬を放置するデメリットは以下の通りです。
- 咀嚼しづらくなる
- 口呼吸になる
- 虫歯や歯周病のリスクがある
- 奥歯に負担がかかる
- 滑舌が悪くなる
ここでは上記5つのデメリットについてそれぞれ解説します。
咀嚼しづらくなる
開咬を放置するデメリットとして、咀嚼しづらくなることが挙げられます。
前歯で食べ物を噛み切ることが難しくなり、麺類やサンドイッチなどをうまく食べられないと感じる場面が増えていきます。
奥歯だけで咀嚼を補おうとすると、食べ物を十分に細かく砕くことができず、かたまりのまま飲み込んでしまいがちです。
このような食べ方が続くと、胃腸への負担が大きくなり、消化不良や栄養吸収の低下を引き起こす恐れもあります。
また咀嚼不足によって唾液の分泌も減少し、口腔内の自浄作用が弱まり、虫歯や歯周病のリスクが高まるという悪循環に陥る危険性もあるため注意が必要です。
口呼吸になる
開咬の影響で唇が閉じにくくなると、無意識のうちに口呼吸が習慣になってしまうことがあります。
口呼吸が続くと口腔内が乾燥しやすくなり、唾液の抗菌作用が低下してしまいます。
その結果、細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病、さらには口臭の原因にもなるのです。
虫歯や歯周病のリスクがある
開咬を放置すると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
開咬によって口が常に開いた状態になると、口内の乾燥が進行しやすくなります。
唾液には本来、口腔内を洗浄したり、細菌の繁殖を抑えたりする自浄作用や抗菌作用がありますが、乾燥が続くとこれらの効果が十分に働かなくなってしまうのです。
特にコロナ禍以降、マスクの着用習慣が定着したことで、口を開けたまま過ごす時間が増え、気づかないうちに口腔環境が悪化しているケースもあります。
虫歯や歯周病を発症すると、開咬だけでなく結果的に治療が必要な範囲が広がってしまうこともあるため、注意が必要です。
奥歯に負担がかかる
前歯でうまく食べ物を噛み切れない開咬の状態では、食事の際に自然と奥歯に頼るようになります。
このため奥歯への負担が過剰になり、歯の摩耗が進んだり知覚過敏が起こったり、最悪の場合には奥歯を失うリスクも高まります。
また左右どちらか一方の奥歯だけを使う癖がつくと、筋肉のバランスにも影響が出て、顔のゆがみを引き起こす原因になることもあるのです。
さらに奥歯への過剰な負担は顎関節にも影響を与え、顎関節症を引き起こすリスクも増加します。
こうした悪循環を防ぐためには、早めに開咬の治療に取り組み、噛み合わせ全体のバランスを整えることが大切です。
滑舌が悪くなる
開咬が原因で前歯に隙間ができると、発音時に空気が漏れやすくなり、滑舌が悪くなるケースが見られます。
特に「サ行」「タ行」「ラ行」などの音が発音しづらくなり、人との会話で言葉がうまく伝わらない場面が増える恐れもあります。
仕事や日常生活でコミュニケーションを取る際に支障をきたす可能性があり、ストレスや自己評価の低下にもつながりかねません。
こうした滑舌の悪化を防ぐためにも、開咬は放置せず、なるべく早めに治療を行うことが大切です。
開咬の治療方法

開咬の主な治療方法は以下の4つです。
- ワイヤー矯正
- マウスピース矯正
- 外科的治療
- 筋機能トレーニング
ここでは上記4つの治療方法についてそれぞれ解説します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、矯正治療で最も一般的な方法です。矯正治療で最も基本的な方法です。
歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を取り付け、そこにワイヤーを通して力をかけることで歯を少しずつ理想的な位置に動かしていきます。
以前は金属製ブラケットが主流でしたが、現在は目立ちにくいセラミック製や透明ブラケットも選べるため、見た目の負担を軽減しながら治療を進められます。
特に開咬の場合、上下の前歯の噛み合わせを改善するため、表側にワイヤーを装着する表側矯正を採用するケースが多いです。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明な樹脂製のマウスピースを使用して歯を段階的に動かしていく治療方法です。
開咬が軽度~中度の場合、この方法で十分に改善できるケースも多くあります。
マウスピース矯正の最大の特徴は、装置が目立ちにくく、取り外しが可能である点です。
食事や歯磨きの際には簡単に外せるため、従来のワイヤー矯正に比べて口腔内を清潔に保ちやすいメリットがあります。
ただし、症状が重度の場合や骨格的な問題を伴う場合には、ワイヤー矯正や外科手術が必要になることもあります。
外科的治療
開咬が重度であり、かつ骨格に原因がある場合には、外科的治療が検討されます。
顎変形症と診断された場合は、顎の骨を切り、正しい位置に再配置する『外科矯正』が必要となることがあります。
外科的治療は大掛かりな手術となるため、術前・術後に矯正治療を併用するのが一般的です。
また外科的治療にはリスクや副作用が伴うため、事前に十分な説明を受けたうえで慎重に判断する必要があります。
筋機能トレーニング
筋機能トレーニングは、開咬の根本的な原因にアプローチする治療方法です。
開咬は単に歯並びを整えるだけでは再発する可能性があるため、舌や口周りの筋肉の使い方を正しく改善する必要があります。
トレーニングでは唇を閉じる力を強化したり、舌を上顎に適切に収める動作を習得したり、正しい飲み込み方(嚥下動作)を練習したりすることで、歯列と噛み合わせの安定化を図ります。
筋機能トレーニングは専門家の指導のもと行われますが、自宅での継続的な練習が必要不可欠です。
矯正治療と併用することで、治療後の後戻りを防ぎ、長期的に安定した噛み合わせを維持する効果が期待できます。
まとめ
開咬を自分で治そうとするのは、歯や歯茎へのダメージを招くだけでなく、噛み合わせの悪化や口腔トラブルを引き起こすリスクも高く非常に危険です。
開咬を放置すれば咀嚼力の低下や口呼吸、虫歯リスクの増加、滑舌の悪化といったさまざまな問題が生じるため、なるべく早めに専門医へ相談し、正しい治療計画を立てることが大切です。
自己流で対処せず、医師のもとで適切な治療を受けましょう。
あおい矯正歯科では、開咬の治療にも対応しています。
患者さん一人ひとりの状況に合った治療を提案しているため、歯並びでお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。

略 歴
- 平成11年
大阪歯科大学卒業
同大学大学院(歯科矯正学) - 平成15年
同大学大学院卒業
同大学 非常勤講師 - 平成16年
同大学 常勤助手
- 平成19年
同大学 常勤助教
- 平成20年
山脇矯正歯科 副院長
- 平成24年
あおい矯正歯科 医院長
- 平成26年
あおい矯正歯科 理事長(医院長兼務)
所属学会・資格
- 博士(歯学)日本矯正歯科学会認定医・指導医

