
開咬(オープンバイト)と呼ばれる不正咬合は、奥歯は噛み合うのに前歯に隙間が空いてしまう状態です。
先天的な原因もあれば、幼少期の癖によるものもあるため、早い段階で癖を直して開咬にならないよう気をつける必要があります。
この記事では、開咬の原因や放置するリスクについて詳しく解説します。
矯正歯科での開咬の治療方法やよくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
開咬(オープンバイト)とは

開咬(オープンバイト)とは、奥歯でしっかり噛んでも上下の前歯が接触せず、隙間が空いてしまう状態のことです。
不正咬合の一種で、前歯で物を噛み切れない、滑舌が悪くなる、口が閉じにくいといった機能的な問題が出やすい特徴があります。
公益社団法人日本矯正歯科学会の調査によると発現頻度は5.37%、つまり20人に1人が開咬と診断されるというデータもあり、身近な症状の一つです。
さらに開咬は見た目にも影響が出ることがあり、「口元がもっこりする」「口がポカンと開いてしまう」といった外見的なコンプレックスにつながることも少なくありません。
このような状態は見た目だけでなく、健康へも悪影響を及ぼします。
前歯で食べ物をうまく噛み切れないため、奥歯ばかりに負担がかかり、結果として胃腸への負担も大きくなります。
さらに発音が不明瞭になる、口呼吸が癖になる、睡眠の質が下がるといった問題が起こることも珍しくありません。
開咬は成長とともに自然に改善するケースもありますが、矯正治療が必要となる場合が多いです。
「前歯で食べ物が切れない」「いつも口が開いている」といった症状に気づいたら、できるだけ早く矯正歯科に相談することが大切です。
開咬の原因

開咬の主な原因として、以下の3つが挙げられます。
- 指しゃぶり
- 舌癖
- 骨格の遺伝
ここでは上記3つの原因についてそれぞれ解説します。
指しゃぶり
幼少期に長期間指しゃぶりを続けると、上の前歯が前方に、下の前歯が内側に押されてしまい前歯の間に隙間ができる原因になります。
通常、3歳頃までの指しゃぶりは自然な行動とされますが、4歳を過ぎても続いている場合は歯並びに悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
特に永久歯への生え替わり時期と重なると、開咬が固定化されるリスクがあるため注意が必要です。
早めに習慣を見直し、必要に応じて歯科医院で相談することが大切です。
舌癖
舌を無意識に前歯の間に押し出す癖(弄舌癖)は、歯に圧力をかけ続けることで前歯が外側に移動し、開咬の原因となります。
特に飲み込むときに舌を突き出す癖や、リラックス時に舌が歯に触れている状態が続くと、前歯の位置がずれてしまうのです。
舌癖は出っ歯やすきっ歯の原因にもなるため、正しい舌の位置を意識することが大切です。
矯正治療と並行して『口腔筋機能療法(MFT)』を行うことで改善が期待できます。
骨格の遺伝
顎の形や大きさといった骨格の特徴は遺伝することがあり、これが開咬の大きな要因となることがあります。
例えば上顎が狭かったり、下顎の成長が不十分だったりすると、前歯がうまくかみ合わない構造的な問題が起こります。
こうした骨格性の開咬は歯列矯正だけでなく、外科的処置が必要になるケースもあるため、早期の診断が重要です。
家族に同様の症状がある場合は、特に注意しましょう。
開咬を放置するリスク

開咬を放置するリスクとして、以下の6つが挙げられます。
- 咀嚼障害・嚥下障害につながる
- 奥歯に負担がかかる
- 虫歯や歯周病のリスクが高まる
- 口呼吸になる
- 発音しづらくなる
- 出っ歯や口ゴボなど見た目の問題につながる
ここでは上記6つのリスクについてそれぞれ解説します。
咀嚼障害・嚥下障害につながる
開咬を放置すると、食べ物を細かくできないまま飲み込んでしまうため咀嚼障害や嚥下障害につながる恐れがあります。
食べ物が誤って気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎などの重篤な病気を引き起こすこともあるため放置は危険です。
また咀嚼が不十分なまま食べ物を飲み込むことで、胃腸障害を引き起こしてしまうケースもあります。
奥歯に負担がかかる
開咬の人は、前歯を使って食べ物を噛み切ることができないため、自然と奥歯に頼るようになり、咀嚼時の負担が偏ります。
負荷が集中した奥歯は摩耗が早く、ヒビ割れや破折のリスクも高まる傾向にあります。
ひどい場合には抜歯が必要になることもあるため注意が必要です。
さらに片側ばかりで噛む癖がつくと、顎の筋肉バランスが崩れ、顔の歪みにつながることもあります。
放置するほど咬合の崩れが進行し、全体の健康状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。
また奥歯を失うと咀嚼機能や消化機能の低下を招く恐れもあるため、早めに治療を行うことが大切です。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
開咬を放置すると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
開咬があると唇が閉じにくくなり、無意識のうちに口呼吸が習慣化してしまいます。
これにより口の中が乾燥しやすくなり、唾液の量も減少してしまうのです。
唾液は口内の自浄作用や抗菌作用を担う重要な役割がありますが、分泌量が少ないと細菌の繁殖が進みやすくなります。
その結果、虫歯や歯周病のリスクが上昇するのです。
さらに、乾いた口内は口臭の原因にもなり、口腔衛生にも大きな悪影響を及ぼします。
歯磨きのみでは対応しきれないため、矯正治療による根本的な噛み合わせの改善が必要です。
口呼吸になる
開咬によって前歯が噛み合わないと、口をしっかり閉じるのが難しくなります。
口が常に開いている状態が続くと、呼吸が鼻ではなく口から行われるようになり、口呼吸が習慣化してしまいます。
口呼吸は口内の乾燥を引き起こすだけでなく、喉や気道の粘膜も傷みやすくなり、感染症にかかるリスクが高まってしまうのです。
特に風邪や細菌・ウイルス感染のリスクが増すため、健康面での悪影響が大きくなります。
発音しづらくなる
開咬によって上下の前歯に隙間があると、発音の際に空気が漏れてしまいます。
その影響でサ行やタ行などの音が不明瞭になり、聞き取りづらい話し方になってしまうこともあります。
人前で話す機会が多い方の場合、仕事や日常のコミュニケーションに支障をきたすこともあるため、なるべく早めに治療を行うことが大切です。
出っ歯や口ゴボなど見た目の問題につながる
開咬は見た目にも大きな影響を与える不正咬合の一つです。
放置することで前歯が前方に傾いたり、口元が突出したような『出っ歯』や『口ゴボ』といった状態になることがあります。
このような変化はコンプレックスにつながり、人前で話したり笑ったりすることに抵抗を感じるようになります。
特に思春期以降は容姿への意識が高まる時期でもあり、精神的なストレスが増す原因にもなり得るため注意が必要です。
矯正歯科での開咬の治療方法

矯正歯科での開咬の治療方法は主に以下の4つが挙げられます。
- ワイヤー矯正
- マウスピース矯正
- 外科手術
- 口腔筋機能療法(MFT)
ここでは上記4つの治療方法についてそれぞれ解説します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、一般的な歯列矯正の方法で、開咬の治療にもよく用いられます。
表側矯正・裏側矯正・ハーフリンガル矯正といった種類があり、それぞれ装着位置や見た目、費用などが異なります。
開咬の治療では、奥歯を歯茎側へ沈める圧下が必要になることが多く、その際にアンカースクリューと呼ばれる小さなネジを併用するケースが少なくありません。
このネジを固定源にすることで、精密に歯を動かすことが可能になります。
治療にはある程度の期間が必要ですが、信頼性の高い治療方法です。
マウスピース矯正
目立たない矯正を希望する方に人気なのがマウスピース矯正です。
透明な装置を使って歯を段階的に動かす方法で、開咬にも適応できます。
マウスピースは奥歯を圧下しやすい性質があり、前歯のかみ合わせを整えるのに効果的です。
マウスピース矯正にはいくつものブランドがありますが、その中でもインビザラインが代表的で、装着時に見た目の違和感が少ないというメリットがあります。
ただしマウスピースは1日20時間以上の装着が必要で、装着時間が短くなると効果が薄れるため、徹底した自己管理が求められます。
見た目の自然さと治療効果を両立したい方におすすめの治療方法です。
外科手術
骨格性の問題が大きい開咬では、矯正治療だけで改善が難しいケースもあります。
その場合には、顎の骨を切って位置を調整する外科手術が必要となります。
手術は全身麻酔下で行われ、入院や術後の管理も含めると、身体への負担が大きい治療方法です。
ただし、重度の開咬に対しては根本的な改善が見込める方法でもあります。
術後は矯正治療と組み合わせて噛み合わせの最終調整を行い、自然な咀嚼や発音ができる状態を目指していきます。
筋機能トレーニング
歯の位置だけでなく、口周りの筋肉の使い方や舌の動きも、開咬の発症や悪化に関わっています。
口腔筋機能療法(MFT)は、唇・舌・頬などの筋肉を強化するための訓練です。
開咬の原因となる舌の突出癖などの習慣を改善することで、治療効果の維持にもつながります。
主に発音の練習・嚥下動作の改善・舌の位置調整などを中心に行われ、矯正治療と並行して進めることで後戻りを防ぐ効果も期待できます。
継続的に取り組む必要はありますが、根本的な改善には欠かせない治療方法といえるでしょう。
開咬の治療に関するよくある質問

開咬の治療に関するよくある質問をまとめました。
- 開咬の治療は保険が適用される?
- 開咬の治療期間はどれくらい?
- 開咬は自分で治せる?
ここでは上記4つの質問についてそれぞれ解説します。
開咬の治療は保険が適用される?
開咬の治療は原則として自費診療となるケースが多いですが、『顎変形症』と診断された場合には、保険が適用されることもあります。
具体的には、手術を伴う治療が必要であり、かつ厚生労働省が指定した医療機関での処置が条件です。
逆に審美目的や軽度の不正咬合で外科手術を伴わないケースでは、たとえ開咬の症状があっても保険は使えません。
保険が適用されるかどうかは、事前に歯科医院へ確認しておくことが大切です。
開咬の治療期間はどれくらい?
開咬の治療期間は症状の重さや選択する治療法によって異なります。
軽度の開咬であれば数ヶ月~数年程度で改善することもありますが、骨格的な要因がある場合や外科手術を伴う場合にはそれ以上の期間を要するケースも少なくありません。
また歯列矯正が必要な場合、治療中は装置の調整や定期的な通院も必要になります。
さらに治療後にはリテーナーを使って歯並びを安定させる保定期間も設けられるため、全体のスケジュールをあらかじめ把握しておくと安心です。
開咬は自分で治せる?
結論から言うと、開咬は自力で治せるものではありません。
市販のマウスピースやネットで紹介されている矯正方法を試す人もいますが、自己流で行うと症状が悪化する恐れがあります。
骨格や歯根の状態まで考慮せずに力を加えると、歯の位置が余計にずれてしまったり、歯そのものにダメージを与えてしまったりする危険性があります。
開咬の改善には歯科医師による診断と専門的な治療が必要なため、必ず歯科医院で相談しましょう。
まとめ
開咬の原因は幼少期の指しゃぶりや舌癖といった習慣的な癖から、遺伝による骨格の問題まで多岐にわたります。
原因に応じた適切な治療を行うことで、見た目の改善はもちろん、咀嚼機能や発音の安定も期待できます。
気になる症状がある場合は、早めに歯科医院で相談することが大切です。
あおい矯正歯科では、子供から大人まで幅広い世代の矯正治療に対応しています。
患者さん一人ひとりのご要望や生活環境に適した治療計画を提案しているため、開咬にお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。

略 歴
- 平成11年
大阪歯科大学卒業
同大学大学院(歯科矯正学) - 平成15年
同大学大学院卒業
同大学 非常勤講師 - 平成16年
同大学 常勤助手
- 平成19年
同大学 常勤助教
- 平成20年
山脇矯正歯科 副院長
- 平成24年
あおい矯正歯科 医院長
- 平成26年
あおい矯正歯科 理事長(医院長兼務)
所属学会・資格
- 博士(歯学)日本矯正歯科学会認定医・指導医

