
矯正治療中に引っ越しや転勤が決まると、今の歯科医院に通い続けられるか不安になるものです。
転院は可能ですが、返金額や追加費用、治療計画の変更など注意すべき点があります。
結論からお伝えすると、転院にかかる追加費用の目安は数万〜十数万円程度で、すでに支払った治療費は治療の進行状況に応じて最大60〜70%が返金される可能性があります。
本記事では、矯正歯科を途中で変える場合の費用の目安や手続きの流れ、デメリットについて詳しく解説します。
転院すると費用はどうなる?返金の目安と追加費用

矯正歯科を途中で変える場合、最も気になるのは「支払い済みの費用がどうなるか」でしょう。
返金の有無や追加費用について整理します。
治療の進み具合に応じた返金の目安
治療費を一括で支払い済みの場合、治療の進行状況に応じて未施術分が返金されるのが一般的です。
日本臨床矯正歯科医会では、永久歯列期のマルチブラケット装置による治療について以下の返金目安を示しています。
| 治療ステップ | 返金額の目安 |
|---|---|
| 全歯の整列 | 60〜70%程度 |
| 犬歯の移動 | 40〜60%程度 |
| 前歯の空隙閉鎖 | 30〜40%程度 |
| 仕上げ | 20〜30%程度 |
| 保定 | 0〜5%程度 |
※上記は全額支払い済みの場合の目安であり、実際の返金額は歯科医院の方針や契約内容によって異なります
基本的に全額返金は難しいと考えておきましょう。
歯科医院側に明らかな過失がある場合を除き、すでに行った治療にかかる費用は返金の対象外となります。
参考:日本臨床矯正歯科医会「転居等で矯正歯科治療が継続できなくなった場合の治療費の清算について」
【費用シミュレーション】
たとえば、治療費80万円を一括で支払い、「犬歯の移動」段階で転院した場合、返金額の目安は32〜48万円程度です。
ただし、この金額はあくまで目安であり、歯科医院によっては返金率が異なる場合や、まったく返金されないケースもあります。
契約書の内容を必ず確認してください。
マウスピース矯正は返金が難しいケースがある
インビザラインなどのマウスピース矯正は、治療計画の確定段階で全ステップ分のマウスピースが設計・製作されます。
そのため、すでに製作済みのマウスピースにかかった費用は返金対象にならないケースが多いです。
ワイヤー矯正に比べて返金のハードルが高くなる傾向があるため、マウスピース矯正を検討している方は、契約前に転院時の費用清算について確認しておくことをおすすめします。
転院先で新たに発生する費用
転院先では以下のような追加費用が発生する可能性があります。
- 初診料・カウンセリング料
- レントゲンやCTなどの検査費用・診断料
- 紹介状・資料の作成費用(転院元に支払う)
- 矯正装置の再作製費用(装置を引き継げない場合)
矯正治療は自由診療のため、転院先の料金体系によっては治療費の総額が当初よりも大きくなる可能性があります。
転院先を決める前に見積もりを取り、費用の全体像を把握しておくことが重要です。
一括払い・ローン払いで返金の流れが異なる
支払い方法によって返金の手続きは変わります。
一括払いの場合は歯科医院から直接返金されるのが一般的です。
デンタルローンやクレジットカードの分割払いを利用している場合は、ローン会社やカード会社への連絡・手続きが別途必要になります。
契約内容によっては解約手数料が発生するケースもあるため、転院を決める前に契約書をよく確認し、不明な点があればローン会社と歯科医院の双方に問い合わせておきましょう。
途中で歯科医院を変えることになる主な理由

矯正治療は1〜3年ほどの通院が必要になるため、その間にライフスタイルが大きく変わることがあります。
ここでは転院を検討するきっかけとして多い理由を紹介します。
引っ越しや転勤で通院が難しくなった
転院理由として最も多いのが、転勤や転校にともなう引っ越しです。
矯正治療中は1〜3ヶ月に1回の通院が必要になるため、引っ越し先から通える距離でなければ転院を検討する必要があります。
治療の残り期間や通院頻度によっては、引っ越し先から元の歯科医院に通い続けるという選択肢もあるため、まずは担当医に相談してみてください。
就職・結婚などで生活環境が変わった
就職や結婚をきっかけに生活リズムが変わると、これまで通えていた診療時間に合わせるのが難しくなる場合があります。
矯正歯科医が常駐していない歯科医院の場合、さらにスケジュール調整が困難になるでしょう。
通院の間隔が空きすぎると治療の進行に影響が出るため、無理に通い続けるよりも生活環境に合った歯科医院への変更を検討した方がよいケースもあります。
留学で長期間通えなくなった
海外留学の場合、数ヶ月〜数年にわたり通院できなくなります。
留学先の歯科医院で治療を引き継ぐ方法もありますが、日本人の歯列矯正に対応できるクリニックを見つけるのは容易ではありません。
留学中は矯正装置を一旦外してリテーナー(保定装置)で歯並びを維持し、帰国後に治療を再開する方法が一般的です。
渡航前に担当医と今後の方針をしっかり話し合っておくことが重要です。
担当医との相性が合わないと感じた
治療の説明が不十分だったり、質問や不安を相談しにくいと感じたりすると、治療への信頼が揺らぐことがあります。
矯正治療は担当医との二人三脚で進めるものですから、信頼関係を築けないまま治療を続けることはストレスになり、治療結果にも影響しかねません。
まずは率直な気持ちを担当医に伝えてみることが大切ですが、改善が見られない場合や複数の歯科医師がいる医院であれば担当医の変更を申し出ることも一つの方法です。
途中で歯科医院を変えることのデメリット

転院は可能ですが、費用面以外にもいくつかのデメリットがあります。
転院を決める前に把握しておきましょう。
治療期間が数ヶ月〜半年ほど延びることがある
転院先が決まるまでの間に治療が中断されると、その間に口腔内の状態が変化してしまう場合があります。
さらに、転院先で新たに検査や診断を行い、治療計画を一から立て直す場合は当初の予定よりも数ヶ月〜半年ほど治療期間が長引く可能性もあります。
転院を決めたらできるだけ早く転院先を確保し、中断期間を最小限に抑えることが、治療を長引かせないポイントです。
検査や治療計画をやり直す場合がある
矯正治療は歯科医師ごとに治療方針や使用する装置が異なります。
転院先がこれまでと同じ治療方法に対応していない場合、レントゲン撮影や歯型の採取といった検査からやり直し、治療計画を再度立てる必要が出てくるケースがあります。
特にマウスピース矯正やリンガル矯正(裏側矯正)など、特殊な装置を使用している場合はそのまま引き継ぐことが難しく、装置の再作製が必要になるケースも少なくありません。
中断中に虫歯や歯周病が進行するリスクがある
ワイヤー矯正の装置を装着している状態は歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクが通常よりも高まっています。
転院までの中断期間中に歯科医院でのメンテナンスを受けられないと、気付かないうちに症状が進行してしまうおそれがあります。
矯正治療中に虫歯や歯周病が見つかると、矯正を一時中断してそちらの治療を優先しなければならないケースもあり、結果として治療期間がさらに延びる原因になります。
後戻りで歯並びが崩れるおそれがある
矯正中の歯は元の位置に戻ろうとする力が常に働いています。
治療が中断された状態でリテーナーなどの保定処置を行わないと、せっかく動かした歯が元の位置に後戻りし、それまでの治療成果が損なわれてしまう可能性があります。
転院までに時間がかかりそうな場合は、担当医にリテーナーを作製してもらい、歯並びを維持する対策をとっておくようにしてください。
転院の手続きと準備の進め方

転院をスムーズに進めるには、事前の準備が欠かせません。
ここでは具体的な手順を解説します。
転院が決まったら、まず担当医に相談する
転院が必要になったら、できるだけ早い段階で現在の担当医に伝えることが重要です。
相談することで今後の流れや注意点の説明を受けられるほか、引き継ぎ資料の作成にも時間がかかるため、早めの連絡が転院をスムーズに進める第一歩になります。
担当医に事情を伝えることで、通院頻度の調整やオンラインでの経過観察など、転院せずに治療を継続できる方法を提案してもらえることもあります。
転院先を選ぶ際に確認しておきたい4つのポイント
転院先を探す際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 現在と同じ矯正方法・装置に対応しているか
- 治療途中からの受け入れ実績があるか
- 費用の見積もりや料金体系
- 通院しやすい立地・診療時間
矯正方法が変わると装置の再作製や治療計画のやり直しが必要になり、費用や治療期間が大きく膨らむ原因になります。
可能であれば、担当医から提携先や信頼できる転院先を紹介してもらうのがもっとも安心です。
紹介を受けられない場合は、日本矯正歯科学会の認定医・専門医が在籍する歯科医院を選ぶことも一つの基準になります。
引き継ぎに必要な書類を準備する
転院先での治療をスムーズに始めるために、現在の歯科医院から以下の資料を準備してもらいましょう。
- 紹介状(診療情報提供書)
- 治療開始時の検査資料(レントゲン・歯型・口腔内写真など)
- 治療計画書・診断内容
- これまでの治療経過の記録
- 費用の支払い状況がわかる書類
これらの資料が揃っているほど、転院先での検査や診断のやり直しを最小限に抑えられます。
資料の作成には手数料がかかることもあるため、費用についても事前に確認しておきましょう。
矯正治療の転院に関するよくある質問

保定期間中でも転院できますか?
保定期間中の転院は可能です。
矯正治療中ほど頻繁に通院する必要がないため、手続きも比較的スムーズに進むことが多いです。
ただし、通院が面倒になって保定を中断すると後戻りのリスクが高まります。
通えなくなった場合は放置せず、転院先でリテーナーの管理を続けてください。
転院せずに治療を続ける方法はありますか?
引っ越し先が片道1時間程度であれば、通院頻度を調整しながら同じ歯科医院で治療を続けるという選択肢もあります。
特に治療が終盤に差しかかっている場合は、転院するよりも通い続けた方が費用・期間ともに負担が少ないケースがあります。
まずは担当医に相談してみましょう。
転院先は自分で探す必要がありますか?
担当医に相談すれば、提携先や同じ治療方針を持つ歯科医院を紹介してもらえることがあります。
紹介を受けた歯科医院であれば治療の引き継ぎがスムーズに進みやすいため、まずは担当医に聞いてみることをおすすめします。
紹介が難しい場合は、日本矯正歯科学会や日本臨床矯正歯科医会のホームページから認定医が在籍する歯科医院を探すことができます。
まとめ

矯正治療の途中で歯科医院を変えることは可能ですが、費用の追加負担や治療期間の延長といったデメリットがともないます。
転院時の返金額は治療の進行状況によって異なり、日本臨床矯正歯科医会の目安では最大60〜70%程度です。
マウスピース矯正の場合は返金が難しいケースもあるため、事前に契約内容を確認しておくことが大切です。
転院を検討する際は早めに担当医へ相談し、引き継ぎ資料の準備と転院先の選定を計画的に進めましょう。
中断期間が長くなるほど後戻りや虫歯・歯周病のリスクが高まるため、スムーズな移行が治療成功のカギになります。
あおい矯正歯科では、転院を含む矯正治療に関するご不安やお悩みに丁寧にお応えしております。
他院で治療中の方のご相談もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

略 歴
- 平成11年
大阪歯科大学卒業
同大学大学院(歯科矯正学) - 平成15年
同大学大学院卒業
同大学 非常勤講師 - 平成16年
同大学 常勤助手
- 平成19年
同大学 常勤助教
- 平成20年
山脇矯正歯科 副院長
- 平成24年
あおい矯正歯科 医院長
- 平成26年
あおい矯正歯科 理事長(医院長兼務)
所属学会・資格
- 博士(歯学)日本矯正歯科学会認定医・指導医

